2012.08.03 [years ago today]
# そしてきみだけが大人に
脇道にそれて駆け上がる石段は 古びた母屋の影の中 丘のうえ狭い神社から見下ろせば 砂浜がカーブ描いてる 帰りたくないな きみはそうつぶやいて サーファーが帆をたたむ夕暮れを見ている 去年よりずっと長く流れる髪を ぼくの眼に焼き付けて 明日きみは町へ 帰ってしまう 湯上がりにきみと浴衣着て丘のうえ 蛍と花火が競う夜 毎年のようにくり返すことなのに 不思議な気持ちを感じてる あの頃のままのぼくがきみを見るたび ときめきと淋しさが訪れるのはなぜ 去年よりずっと大人になったきみが 変わらないふりをして手をつなぐのはなぜ 知りたいんだ 帰るなよなんて言えず最後の花火 きみの眼に青いきくが咲くのを見た
1993年。